五年間の感謝と、半年の絶望と、一年の空回り。

偶然。彼女に会った。
目黒の駅前で。

一年半振りに会った彼女は、
何も変わらず、髪をお団子にまとめて、
颯爽と前だけを見ていた。

向こうが気がつくまで、一瞬の間があって、
一言だけ、言葉を交わした。

久しぶり。と。

仕事は順調ですか?
聞きたいのはそれだけだったが、
それすら、聞けずに。

僕が君に連絡しないのは、
嫌いになったわけでも、
忘れたわけでもない。

いまだ、何も成し遂げられていない
自分を恥じているだけだから。
僕はまだ、何者でもない誰かのままでいる自分を、
受け入れられないままでいます。

君はどうか、素敵な何者かになって、
颯爽と前だけを向いて歩いて欲しい。

君の知らない、五年間の感謝と、半年の絶望と、一年の空回り。

新しい恋をしていなければ、
きっと、今の何倍も憂鬱だったと思う。

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