きっと忘れないだろう

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いまは無きセブンイレブンの看板

最寄りのセブンイレブンが閉店した。

コンビニの閉店なんて、特に珍しくもないだろうし、きっと毎日のように日本中のどこかで閉店したり開店したりしているはずだし、近所にはローソンもあるので生活が困るほどではない。

でも、このセブンイレブンの事は、すごく好きだった。
良心を感じるというのか、誠実というのか、流れている空気が良い感じのコンビニで、狭い路地が多いエリアの中では駐車場がそこそこ広くて車が止めやすく、ヤンマガ、ヤンジャンなどの雑誌が立ち読みできるように一冊だけは封印せずに置いてくれるなど、なにかと気が利いていた。

ここは新横浜駅が最寄りなのだが、この辺りに住むのは2度目で、20代の頃も含めるとトータルで9年くらい住んでいて、40年の人生においてかなりの期間をこのエリアで過ごしていたことになる。

この場所に住み始めたきっかけは2度とも家族の事情で、自分の意思ではなかった。

一度目も2度目も、共通するのは母と二人で暮らしたことだ。

一度目は両親の離婚に伴っての引っ越しで、姉弟はもう自立していたので私と母だけ。2度目は母から相談があり、それに応えた形での同居だった。母は辛抱強いうえに楽天家なところがあり、そんな人からのヘルプ要請は、割と深刻なことなんだろうと、すぐに動いた。

母と住むことになり、一刻も早く引っ越し先を決めるにあたって、家賃と広めの間取りとのバランスと土地勘がある場所ってことで、急ぎ引っ越ししたのが2016年12月23日。なんとも微妙なタイミングに引っ越しをしたので、忘れようがない。

なんとか通えるものの会社は遠いわ、菊名駅まで歩いて15分近くかかるし、母親の荷物もなんだかんだ多くて物だらけになるしで、経済的な負担も含めてストレスが大きかった。いろいろ思うことはあったが、なんとか飲み込みながら、やり過ごすように暮らした1年半だった。

仕事も忙しい時期と重なっていたので特に大変で、終電で帰ってから家で続きをして、早朝に起きて仕事して出社、週末もなんだかんだ仕事。みたいなことになっていたが、自身の謎のプライドに懸けて意地になってこなしていた。

母は「よくやるね、頑張るね」なんて言って、家事などで支えてくれていたのだが、居心地の良さを感じることはあまりなかった。まぁ、良い歳して親と同居して居心地よく感じるような奴には、母も絶対になって欲しくはなかっただろうけども(知らんけど)。

そんな時期を経て、12年くらい勤めた会社をついに辞めることにしたのが2018年5月。それなりに根回しをしていくつかの仕事はそのまま継続できるようになったのだが、辞めた途端に、担当していたメインの案件から外される。独立あるあるとはいえ、タイミング良すぎやしないか。

2年近く、人生の多くの時間を割いてきた仕事だった。
自分で創り上げてきた仕事だという自負があったのだが、あっけないものである。

メインの案件から突然外されてしまうと、他の仕事は急には作れないので一気に暇になり、昼夜も逆転して絵に描いたようなダメな感じに。

で、そんなグダグダを知ってか知らずか、母が群馬の親戚の家に引っ越すことになったのが、2018年の7月。
軽い認知症を患う母の姉、つまり私の叔母さんの身の回りの世話をするためで、叔母さんの子供達つまり私の従妹は3人いるのだが、いまいち姉弟間の折り合いが悪いらしく母が適任ということで懇願されたということだった。条件面も悪くないということではあったが、このまま横浜にいて、息子の世話になっていてもどうしようもないという判断も働いたのだろう。

あっという間に荷物をまとめて、あっけなく引っ越していった。
あっさりしたもんだ。

客観的に見ても母には色々な才能があり、不思議な魅力のある人だ。今から50年以上前に高校を卒業して、ファッションデザイナーを目指して上京したが父と結婚してしまったことで人生の歯車が狂ってしまったのは間違いない。が、おかげで自分がここにいるわけで、母の人生について考えると、なんだか複雑ではある。

世の中は、家族は良いものである前提のコンテンツで溢れかえっているが、家族運営を失敗すると、家族全体で謎の連帯責任を負わされるケースも多いだろうし、どっちかっていうと問題が起きることの方が多いのではないかとも思ってしまう。それも含めて家族というのだし、自分のルーツでもあるので、あまり否定したくはないのだが。

我が家族は、例によって運営に失敗し20年くらい前に解散したのだが、その後の方が確実に平和だし、心穏やかだし、人間として正しい方向に成長できている実感がある。結婚をポジティブに考えられない理由はこの辺りにもありそうではある。

で、2LDKの一部屋が空いてガランとした家に、グダグダ男が一人が残された。とりあえず今まで10年近く忙しくてできなかったことをしようと思い立ち、断捨離を決行した。

それはそれは、なかなかいい量の物を捨てました。引っ越しが多い10年間だったので、その都度捨てているつもりだったのだが、ダンボールに入ったまま複数の家を渡り歩いてきたツワモノもいたりして、一度、ここで全てを見直すにはいいタイミングだった。

思い出の品とか、写真とか、本とか雑誌とかおもちゃとか、洋服もでかいビニール袋5枚が満杯になるくらい捨てた。全荷物の3割くらいは捨てたのではないだろうか、どんだけ無駄な物を背負って生きてきたんだ、お前は。

家にいる時間が長くなると、自然とコンビニとの距離も近くなる。もうそこにあるのが当たり前になっていた。深夜におにぎりやコーヒーを買いにいったりとか、早朝にゴミ袋を買いにいったりとか、メルカリの発送したりとか。このちょっと気の利いたセブンイレブンはもう本当に生活の一部だったと言っていい。

で、閉店のお知らせ。

完全にセブンイレブンに依存した生活をしていた数か月…
なんとか閉店しないでいただくわけには、いかないでしょうか…

懇願虚しくあっという間に閉店セールをして、あっけなく閉店した。
あっさりしたもんだ。

そう、本当にあっさりと消えてなくなってしまった。当たり前にそこにいたものは、実は当たり前なんかじゃなかった。
いつでもそうだったはずなのに、すぐに大事なことを忘れてしまって人生を後悔しながら生きていく羽目になる。もう、本当にうんざりなんですよね、そういうの。

大事な教訓として、忘れずに肝に銘じておこうと思います。

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