世代的なこともあるし、高校時代はバスケをやっていたこともあって、スラムダンクは普通に好きな作品です。そこまでのファンでもないはずなんだけど、気が付いたら、映画も初日に見に行ってしまっていた。
結論、映画自体はとても良かった。原作を一度でも読んだことがあれば、まぁ間違いなく楽しめる一級のエンタメ作品だと思った。あの山王戦がここまで再現されて、このスピード感と迫力で見れるなんて、誰か捕まえて、もう一回くらい見たい。
映画の主人公は、宮城リョータ。主役級の登場人物の中でも、現実的なサイズ感で身長168cmのポイントガード。あの田臥勇太が173cmなのでだいたい同じくらい。運動神経抜群でなおかつピアスなんかしてて、お洒落なキャラクター(個人的には豊玉の南に次いでお洒落なイメージ)。物語全体を通して当然目立ってはいるが、原作ではアスリートとしての側面はあまり目立って描かれていなかった。もちろん凄い選手なのだが、背景みたいなところはほとんど出てこない。というか、そもそもスラムダンクの湘北高校は公立高校ってこともあるし、宮城リョータに限らずスポーツエリート的な描かれ方はほとんどしていない作品であった。映画では原作では描かれなかった宮城リョータの生い立ちとか、アスリートとしての側面が丁寧に描かれるわけです。
かく言う私も、スラムダンク連載当時、前述のとおり神奈川の県立高校でバスケをやっていた。やっていたと言うのもおこがましいレベルなので、在籍していたことがある…くらいの感じにしておきますが。高校のチームは地区大会の2~3回戦で負けるレベルで、全然弱かった。でも部長は中学時代は全国大会に出たことのある奴だったし、エースの二人もミニバス上がりで中学時代はそこそこの有名選手だったようで中学の選抜チームに選ばれていたり、バスケの名門高から声がかかったりもしていたみたいで、実際に試合を見てると、そこまで弱い感じは全然しなかった。けど、不思議といつもあっさり負けてたけど。
本気で部活を頑張る奴もいれば、どっちでもない普通の奴、下手なうえに雰囲気を悪くして足を引っ張る私のような最低な奴。いろいろいるのが普通の県立高校のリアルである。スラムダンクはそんな県立高校のリアルな部活動の雰囲気を上手に描いていた。赤木が全国制覇を信じて努力する姿を揶揄するメンバーとの確執が描かれていたりして、井上雄彦の高校スポーツに対するリアリティがスラムダンクをただのスポーツ漫画とは一線を画した作品にしたのだと思う。
当時の神奈川県で、全国大会常連だったのは湘南工科大付属高校。スラムダンクの海南大付属のモデルになったと言われていた高校だった。そこで全国大会にも出て、神奈川ベスト5に選ばれた岸本という選手がいたんだけど、その人は小学校、中学校の同級生だった。小学校の時はけっこう仲良くしていた。神奈川ベスト5とかって仙道とか牧ってことだから、まぁとんでもなく凄い。そんな漫画なんだか現実なんだかわからないような世界線で私とスラムダンクの世界は確かに繋がっていた。
で、宮城リョータである。全国大会に出る高校でポイントガードでレギュラー。スーパーアスリートである。でも、映画を見るまでは、そんな風に捉えたことは無かった。
小学校からずーっとバスケ漬けの生活を送り、中学でもきっとスター選手だっただろうし、高校でも全国大会に出場、しまいにはアメリカの大学で沢北と対戦する。バスケのことだけを考えて、バスケを人生の糧にして生きてきた奴だったんだ。そうじゃなきゃ、全国大会なんか出られるわけがない。人生を懸けて最後まで諦めなかった。宮城リョータの人生に触れて、なんだかすごく打ちのめされてしまった。
宮城リョータは小暮とか宮益とか、わかりやすく共感させようとするキャラではなく、すごいけど凄すぎない選手としての役割を担っていた。スラムダンクの中でも、現実とフィクションの間を繋ぐちょうどいい存在だったのかもしれない。まぁ、山王戦での活躍とか、最後まで動けてるスタミナ含めて全然普通じゃないんだが。
高校野球とか高校サッカーとか、自分とは全く関係の無い世界。子供の頃から努力に努力を重ねて、家族や運にも味方されてはじめて日の目を浴びる世界。きっと勉強も同じだろう、東大や京大に入るような人達は。
10代の頃は、とにかく無気力だった。環境のせいにするわけじゃないけど、そんな雰囲気の家庭でもなかった。勉強もスポーツも向いていなかったし努力もしなかった。とにかく自分という人間に自信が無かった。20代、30代を経てすこしづつだけど、自信も付いてきて、なんとか人並みに暮らせるようになったけど、幸せとは程遠い暮らししかできていない。
幸いにして、人生の栄光時代はまだ来ていない。40代も半ばになって色々と振り出しに戻ってしまったけど、諦めたら試合終了だからやるしかない。人生はまだまだ続くから。